月別アーカイブ: 4月 2023

 俳句春秋(自句自解)2023/春

千手より(こぼ)るるひかり御開帳(ごかいちょう)

開帳とは、普段は開かない神仏の厨子を開いて秘仏となっている本尊や祖師像を拝観させることで、春の季語となっている。私は数年前に京都のとある寺で秘仏の千手観音を見せて頂いたことがある。そのときの強い印象を句にした。(季語・開帳)

つばめ来る濤音高き美術館

葉山には山口蓬春の自宅を美術館にした山口蓬春記念館があり、二階にあがると相模湾の澎湃とした海が広がっている。また記念館と道路を隔てたところには、神奈川県立近代美術館があり、そこのレストランも海の波音が高らかに聞こえて人気が高い。私の好きな場所であり、燕が低く飛ぶさまを見るのも実に気持ちがいい。(季語・燕)

バレンタインデー掛蕎麦すする風の駅

信州の駅には立ち食いの蕎麦屋があり、それなりに旨い。こちらはバレンタインデーのチョコレートなどから、あまりに遠くまで来てしまった身で、その日であることも気が付かない。蕎麦屋の厨房に掛かっていたカレンダーの14日に赤丸がついており、「あ」と思った。なぜ赤丸が付いていたのかは、まったくわからない。(季語・バレンタインデー)

2023/04吞海俳句

   黄水仙

寂しさの光の束や枯蓮

舷窓を渡る星々去年今年

春寒や暗礁に鳴る波頭

黄水仙新(さら)のカヤック担ひけり

カヤックに光礫の春の海

シナモンの香るカフェラテ春の暮