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こんにちは。

上泉呑海俳句航海記へ、ようこそ。ご訪問ありがとうございます。

心の奥底から湧き上がってくる詩(うた)を新しい旋律に出来ればと、祈っております。いつの日か、哀切な清冽な詩が駆け抜ける日を。

「詩」を「声」にひろげ、生者の声と死者の声が共存し、活きる言語空間を。現代のなかに古代があり、「声」が「詩」になり、また「声」に戻る世界を。

一つの民族の血と土に根ざしていない詩は、悉く無力な修辞に過ぎないと、愚考しています。

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自句自解(俳句春秋)2019新年

 自句自解(俳句春秋)2019新年 

 雲白く流れてゐたり初秩父

季語は初秩父。初富士、初筑波、初比叡のように元日に名山を仰ぎ見るという意味の季語だが、掲句には、昨年二月に亡くなった俳人・金子兜太さんへの思いを重ねた。元旦の秩父の空に白い雲が悠々と流れている。金子兜太の自在な精神を思う。(季語・初秩父)

 父の樹のはるけきこゑを恵方とす

我が家には樹齢数百年と言われる椨(たぶ)の大樹がある。生まれたときからいつもそばにあった椨の樹。私にとって父を象徴する存在だ。歳徳神が来るめでたい道がその年の「恵方」となる。父から来る呼びかけの方角を「恵方」としたい。(季語・恵方)

 十二月八日海鳴り鎮めがたき夜

十二月八日は大東亜戦争の開戦日である。「海鳴り」は実景ではなく、我が裡なる海鳴りである。上五を「開戦日」ではなく、「十二月八日」と字余りにしたのは、私の強い思いである。(季語・十二月八日)

自句自解(俳句春秋)2018 秋

 自句自解(俳句春秋)2018秋

 敗戦日海図に波が立ち上がる

私の血脈には祖父をはじめ、帝国海軍の提督が多い。祖母は幼い私に彼らの逸話を面白く、ときに切なく語った。毎年8月15日を迎えると、海で戦い、海に散った人々への思いがこみ上げる。(季語・敗戦日)

 亡びたるものにこゑある南洲忌

南洲忌とは、9月24日西郷隆盛の忌日である。明治10年、50歳で没した。滅亡することが明らかな戦いに西郷はなぜ立たなければならなかったのか。その意味は深い。「南洲」は思想である。(季語・南洲忌)

 賢治忌や星座巡りのバスに乗り

賢治忌は、9月21日宮沢賢治の忌日である。『銀河鉄道の夜』は、主人公ジョバンニが親友のカムパネルラと銀河鉄道に乗り、星を巡る旅に出る物語。しかしそのとき、カンパネルラは川に落ちた少年を助けようとしてすでに死んでいたのだが。賢治忌になると、少年時代に戻って思わず星を眺めてしまう。(季語・賢治忌)

呑海俳句2019/01

秋霖や父恋ふる夜のジッポの炎(ひ)

そこにある遠き時間や菊膾

人亡くて深秋いたる書斎の灯

父といふ遥けき水脈や月の船

満月の真只中へポルシェ駆る

呑海俳句2018/12

木の実落つボートハウスの白き椅子

秋霖や四谷見附に灯の入るる

風渉る晩秋の樹に父の聲

バーボンに海鳴り鎮め夜半の秋

雲迅し海を見てゐる寒椿

2018/11 呑海俳句

蒼穹に父のこゑある水の秋

秋時雨帝国ホテルのパンケーキ

賢治忌や星座巡りのバスに乗り

天高し千のマストに千の風

亡びたるものにこゑある南洲忌

 

2018/10 呑海俳句

敗戦日海図に波が立ち上がる

英霊の登舷礼や雲の峰

たつぷりと夜の紅茶を百猿忌

新涼や上七軒の路地明り

夏の蝶大海原へ押して行く

呑海俳句2018/09

神保町闘魚がジンを呑んでゐた

シャンパンに午後のひかりやバルコニー

海の日に海鳴り聞こゆジンライム

遠花火父の未完の肖像画

サーフボードかの日の波を待つてゐる

呑海俳句2018/08

夏至白夜クルーズ船のジャズピアノ

基地の空飢ゑてゐるなり沖縄忌

在日米軍へ上目遣ひの暑さかな

浜昼顔過去の過ぎゆく無人駅

夏至の雨アイリッシュパブの窓明り

自句自解(俳句春秋)2018/夏

 在日米軍へ上目遣いの暑さかな

在日米軍は、日本に70年以上にわたって居続けている。そのことに対して、今の時代精神とは違うかもしれないが、私の中には絶えず、こんなことでいいのかという疼きがある。その疼きを一句に落としたかった。(季語・暑さ)

 夏至の雨アイリッシュパブの窓明り

横須賀を訪ねた折の一句。私は逗子で育ったため、横須賀は幼いころからよく出かけた街である。上記のような思いのある私は、その疼きを抱えながら米軍基地、空母、米兵を見てきたということになる。ところが、その基地の街は今や日本人観光客によって安っぽく大量に消費されている。嗚呼。(季語・夏至)

 浜昼顔過去の過ぎゆく無人駅

学生時代、友人たちと車2台で北海道を旅した。駅の名前も忘れてしまったが、小さな無人駅のそばに浜昼顔が海に向かって咲いていた。なにげない一光景だが、私の心の奥に深く降りて行った。今でも浜昼顔を見つけると、ついその沈澱に浸ってしまう。(季語・浜昼顔)

呑海俳句2018/07

リラ冷えやクレージーホースの楽屋口

寺山忌流離の果ての非常口

白南風やトランペットの慰霊祭

それぞれの海にヨットの走る日よ

けふもまた桜蘂降る母の椅子