カテゴリー別アーカイブ: 坊城俊樹俳句鑑賞

フジテレビとは銀球の春を載せ 坊城俊樹

お台場フジテレビの屋上には巨大なミラーボールと見まがう銀球が在る。その銀球は平成日本の象徴たるメディアの事物の本性を、仮託している。この句からは何の私情も伝わって来ないが、だからこそモノの本性が巨大化するのだ。

 

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「まだ未熟なる猿まはし日向ぼこ  坊城俊樹」

この句を読んだ時、坊城俊樹より

の激励の句である、と勝手に受け取った。

まだ未熟なる私(猿まはし)は、いい気になって俳句を作り、喜んでいる。

そんな私が日向ぼこしている、と。(笑)

「高塔を羽搏くもなき冬の月蝕  坊城俊樹」

宇宙感覚のある句である。冬の月蝕。東京スカイツリー或いは東京タワー

でも良い。高塔には雁の群れも、一羽の小鳥も天空を統べる猛禽類

も見渡せない。マラルメの詩を彷彿とさせた。「寂寥、暗礁、星の影、

わが船の帆の真白なる悩みを与えしすべてのものに」。

「みちのくの氷流して鱶を売る  坊城俊樹」

鮮魚市場に陸奥から鱶が届いた。作者の足元には、鱶の梱包されていた

容器より陸奥の氷が、流れて来た。この氷は被災した陸奥のものである。

しかし、主観は述べられていない。獰猛な鱶が売られている事により、

震災句として、屹立している。

東日本大震災の被災地を訪れずに地震の句を作ることへの躊躇いを、

感じている作者かも知れない。

「クリスマスソングキラキラ訃報また  坊城俊樹」

出がけに、又、訃報が届いた。自分の心とはかけ離れ、街には楽しげな

クリスマスソングが、キラキラと流れている。淋しい且つアンニュイな心情が

伝わって来る。

「寒き電線絡み入るスナック純  坊城俊樹」

ありふれた場末のスナック純。電線自体が寒さに凍り付いている。生きる事に疲れた生活者が、屯するスナック。デジャブー。「絡み入る」と表現したところに、作者の言語感覚の鋭さを感じた。これぞ、平成の客観写生句。