カテゴリー別アーカイブ: 吞海俳句

呑海俳句 2018/01

かりがねや高層街のショットバー

逝く秋や帆(セイル)に残る日のにほひ

ジャズメンの時雨るる午後や基地の街

わが艇(ふね)の吹かれて長き冬銀河

秋霖の底に灯のあるショットバー

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呑海俳句 2017/12

身に入むや父在りし日のジッポの炎(ひ)

逝く秋や父の書斎に日のにほひ

マルボロや遠き時雨の街にゐる

秋深きもののひとつにジッポの炎(ひ)

マリーナに遠く日の差す九月尽

呑海俳句2017/11

マリーナの遥かに灯る水の秋

夕かなかな母の衣桁のしづもれり

さびしさは父なき後の処暑の椅子

かなかなや父の書斎にゐてひとり

潮速し慶良間(けらま)ブルーに秋の空

呑海俳句2017/10

夕顔や時間のひらくジャズセッション

幾万の夏蝶生れよ原爆忌

空蝉を机に並べ敗戦忌

空蝉が哭けば日暮や敗戦日

モノクロの父の戦後や天の川

2017/09呑海俳句

置き去りのデッキシューズや沖縄忌

昏れてゆく雲の墓標や沖縄忌

日輪の軋みの音や沖縄忌

羽蟻とぶ高角砲の錆び付けり

夾竹桃の白に風ある太宰の日

呑海俳句2017/08

リラ冷えやクレイジーホースの桟敷の灯

初ざくら山河に還るもののこゑ

空つぽの桐の箪笥に母のこゑ

五月の鷹かの日の海の風となる

新宿の夜がざらつく修司の忌

自句自解(俳句春秋)2017夏

日輪の軋みの音や沖縄忌

沖縄の人に不条理を押し付け、国防から目をそらしている平成日本。沖縄忌  とは、多くの民間人も犠牲となった沖縄戦において沖縄の日本軍が壊滅した6月23日をいう。太田實海軍中将の最後の電文「沖縄県民斯ク戦ヘリ。県民ニ対シ後世特別ノ御高配ヲ賜ランコトヲ」は悲痛である。上記の歴史的事実を想起したとき、心に日輪(太陽)の軋む音が聞こえた。(季語・沖縄忌)

羽蟻とぶ高角砲の錆び付けり

極東アジアの情勢が緊迫度を増している今日、ことここに至っても、高角砲は錆び付いたままである。その周りを、自己の金儲けだけを考えている無数の羽蟻が飛んでいる。(季語・羽蟻)

夾竹桃の白に風ある太宰の日

太宰治は、『人間失格』『斜陽』『走れメロス』などで知られる無頼派作家。昭和23年6月13日に玉川上水に入水自殺した。太宰忌は桜桃忌とも言うが、その日はよく雨になる。太宰のことを思っている私に夾竹桃の白い花が風に揺れていた。(季語・太宰忌)

 

呑海俳句2017/07

身の裡の海の墓標へ山櫻

その後の桜蕊降る金融街

薔薇の雨駈けて帰らむわれの海

風五月父のかたちは帆のかたち

バス停に夏待つ少年濡れてをり

『失くした時間』6句 月刊「俳句界」7月号に実力作家代表句競詠として掲載。

失くした時間         上泉呑海「河」

かなかなや失くした時間が降って来る

遠き日を廻す日傘や母のこゑ

空に詩を書くや遺品の冬帽子

身のどこか昏れず木枯吹いてゐる

紅梅や金子兜太の鮫が来る

摩天楼天に雁ゆくショットバー

 

1949年神奈川県生まれ。

角川春樹に師事。

2014年「河」入会。17年「河」同人。

「冬帽子」にて第58回「河」全国大会競詠第1位。

2017/06 呑海俳句

飛べ狼、いつしか山羊も跳ぶだらう

三月の空ニモ書カン抒情の詩

身の内を谺してゐる桜かな

花大樹ただ幻を見てゐたり

なつかしむ海の響きや青岬